エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
「いや、絶対いるって顔だったぞ?」

 悪い奴ではないが、一癖あるこの男を安易に紹介して柚希が困ったことにでもなったら佳純が悲しむ。それは避けたい。

「とにかく俺は帰る、じゃあな」

「なんだよ、まったくお前は……まあいい、奥さんによろしくな!」

「ああ」

 やれやれといった顔の同期に手を上げエレベーターに乗り込む。
 佳純に少し相談してみるくらいならいいかと思いながら、瞬は庁舎を後にした。

 パーティから1か月、瞬の周辺はやっと落ち着いてきたところだった。

 芹那は父親に命じられ退職していった。どちらにしてもあのような醜態をさらして働き続けるなどできなかっただろう。斉藤副総監からは再度謝罪があった。現在彼女は気の抜けたように自宅に籠っているらしく、総監は責任を持って監視すると約束した。

 苦々しい気持ちを思い出しながら瞬は車を走らせる。

(あの男にしても、実の姪に対してあんな仕打ちをするなんて到底理解できない。したくもないが)
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