エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 パーティのときのアレンジが評判になり、あのあと警視総監夫人を始め数名の女性に自宅用に注文できないかと打診された。
 佳純はブランクが長いのでお金をもらうわけにはいかないと丁重に断っていたが、花への愛情や熱意は変わらずあるようだ。

(将来自宅でアレンジの教室を開いてもいい。それ前提で家を建てれば可能だな)

 幸せな想像をしながら瞬はラッピングを受け取り、再び自宅に向かって車を走らせた。

「ただいま」

 玄関のドアを開けると、夕食のいいにおいが鼻をくすぐると同時にトタトタと軽快な足音が近づいていた。

「パパ! おかえりなさい」

「ただいま大輝、いい子にしてたか?」

「うん! ぼくいいこだったよ」

 元気よく駆け寄ってきた息子を抱き上げる。4月から幼稚園への入園が決っていている大輝は、再会した時より体重が増え背も伸びた。こうして成長を実感できる幸せを瞬は改めて噛みしめる。

「瞬さん、おかえりなさい。お疲れ様でした」

 少し遅れてエプロン姿の佳純がやってきた。彼女の左手の薬指には瞬とお揃いの真新しい指輪が光っている。明るい表情に迎えられ仕事の疲れが一気に解けた。
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