エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
1.握り合った手
「おはようごさいます!」

 朝8時半、出勤した岡本(おかもと)佳純が明るい声で朝の挨拶をすると、すでに開店の準備を始めている早番のスタッフが手を止めて返事を返してくれた。

 佳純はここ“フローリスト デ・パール”で働く24歳。高校卒業後に就職しているのですでに6年経つ。

 フローリスト デ・パールは東京都杉並区内に店舗を三つ展開している花屋だ。佳純が勤めるこの店はその中のひとつで京王井の頭線沿いの駅から歩いて7分ほどの場所にある。三階建てのビルの一階をまるまる借りており、広々とした店内に切り花はもちろん、鉢物やプリザーブドフラワーなど花に関する様座な商品が所狭しと並んでいる。

 佳純は店の奥でパソコン作業をしている店長に近づいた。

「店長、おはようございます」
「あっ、おはよう佳純ちゃん」

 店長は顔を上げて椅子から立ちあがる。

 佳純が就職してすぐにこの店舗の店長になった彼女は四十代中盤の女性で、百六十センチの佳純より八センチほど背が高く女子バレーボール選手のようなスレンダーな体形をしている。
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