エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
 広い店中を生き生きと動き回り接客も丁寧。腕も一流で、彼女を指名してアレンジの依頼をする固定客も多い。

「この度は、急に一週間も休むことになってしまいすいませんでした」
「そんなこと気にしないで……大変だったわね。もう、手続きとか終わったの?」

 彼女は高校生の息子を持つお母さんでもあり、優しく頼れる人柄だ。佳純のこともなにかと気を配ってくれる。

「はい、大体のことは。今日からまたお仕事がんばりますので、どんどんお仕事振ってくださいね」
 店長の気遣いに佳純は笑顔で答えた。

「わかった。でも、疲れてるだろうから無理はだめよ」
 店長は掌を佳純の肩に優しく乗せる。

「ありがとうございます」
 佳純は頭を下げ、作業に向かった。

 やや華奢な体つきをしている佳純だが、力仕事は慣れたものだ。
 他のスタッフと分担して、花の入ったバケツの水の入れ替えや、入荷された花の水揚げ作業を手際よく進めていく。
 ディスプレイの整理やポップの書き換え、ミニブーケの作成などしているうちにあっというまに開店の時間を迎える。
< 4 / 233 >

この作品をシェア

pagetop