エリート警視正は愛しい花と愛の証を二度と離さない
2.すべてを捨てても
「店長、そっちは私がやるので、ご予約のアレンジの方お願いできますか」
佳純は正月用の花束を作っている店長に声をかけた。
「オッケー、じゃあお願いしていい?」
クリスマスが終わり年末が押し迫ったこの日、フローリスト デ・パールは繁忙期を迎え佳純も忙しく店内を動き回っていた。
店長と交代し、南天や松などが入った正月用の生花のセットを作り始めると、アレンジ用の材料を取り出しながら店長が振り返った。
「こんなに忙しいと鮫島さんに会えなくて寂しいわね。クリスマスも休ませてあげられなくてごめんね」
店長には瞬と付き合い始めたことを伝えてある。彼女はとても喜んでくれて何かと彼と休みが合うようにシフトを融通するなど気を使ってくれていた。
「いえ、気にしないでください。彼今海外に出張していて、日本にいないんです」
ホテルで初めて肌を交わせた三日後、瞬は急遽出張が決りフランスに行ってしまった。
『おそらく年始までは帰れそうもない』
そう彼から電話をかかってきて八日。彼からの連絡はスマートフォンに二回来た無事を知らせる簡単なメッセージだけ。