別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
『鮫島警視は将来警視総監や警察庁長官になれる類まれなる能力を持った人で、彼の理想を実現するにはインターポールでの活躍は欠かせないの』

 芹那の口ぶりからは瞬への憧憬が伝わってきた。

「瞬さんの理想……」
 佳純が知っているのは亡くなった上司の“警察官は人に寄り添う仕事”だという教えを大切にしているということだけ。
 でも、そんな彼を佳純は心から尊敬していた。

 最もショックだったのは芹那の父が瞬をかなり見込んでいて『恋人と別れたら娘と結婚させたい』と言っていることだった。

 彼女の母は旧財閥系の血筋の資産家で、彼の後ろ盾になるにはなんの問題もないという。

『私ならどこに行っても彼を支えられる。それだけの背景を持っているから。わかるでしょう?』

 佳純にはそれができないとはっきり言われている気がした。

 芹那が落ち着いた様子で淡々と事実を並べていくからだろうか、感情的になられるよりじわじわと追い詰められる気がした。

『で、でも、彼の気持ちは……』

 何とか絞り出した言葉も芹那は事も無げに否定してみせた。
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