別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
『そうね、今はあなたと付き合っているかもしれない、でも私と結婚すれば彼は今よりもっと仕事がしやすくなるの。彼は警察組織内でどう振舞えばいいか冷静に判断すると思うわ』

 そう言われると、何も言い返せなかった。だって、警察での彼のことなどこれっぽっちも知らなかったら。

『急にごめんなさいね。でも、あなたの方から別れを切り出してもらった方が彼に罪悪感を持たせなくていいと思ったから。考えてくれないかしら』

 佳純から連絡先を聞き出すと、芹那はタクシーに戻り去っていった。

「瞬さんがお仕事のことをあまり話してくれなかったのは、フランスに行く時には私と別れるつもりだったからなのかな……」
 だいぶ部屋が温まってきた。もう寒くないのにしばらく佳純は動けなかった。



 怒涛の年末が過ぎ、年が明けた。一月六日の今日は休日。週末は成人式でブーケの作成などで忙しくなる予定だ。

 いつもよりゆっくり起きて、洗濯や朝食を終えた午前十時、ベッドに腰かけながらスマートフォンを何気なく開く。そこには元旦にした瞬とのやりとりが残っていた。

『あけましておめでとう、今年もよろしく。あと少しで帰れると思う』
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