別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました
「こうして顔を合わせるのはばあさんの葬式以来か?」

 叔父は神経質そうな顔を歪めて力なく笑った。兄弟で似ているのは痩せた体形だけかもしれない。父は温厚な人柄が出た柔らかい顔つきの人だったから。

「叔父さん、なにかあったの?」

 思わず聞いてしまったのは、いつも外出するときは人一倍服装にこだわる叔父が、ヨレヨレの普段着姿で顔色も優れなかったからだ。

 見るからに憔悴している様子にさすがに心配なった佳純は叔父を部屋に入れることにした。

「温かいお茶でいい?」

 声をかけると、狭い玄関に立ったまま叔父が突然膝を付く。ぽかんとする佳純をよそに叔父は頭を床に擦り付けた。

「佳純、頼む! 金を貸してくれ!」
「ちょ、ちょっと待って、叔父さん本当になにがあったの?」

 慌てて駆け寄ると、叔父は俯いたまま言った。

「……会社の金、使い込んだんだ」

「え……」

「出来心だったんだよ、最初はパチンコで損した分、戻したいと思ってちょっと拝借しただけだったんだ」
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