転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
第1話 記憶を取り戻……させられた 01
つい先ほどまで晴れていた空が、急に暗くなってきた。
「雨になるのかな」
そんなことを思っていたら、ポツポツと落ちてきた雨粒が、一気に激しくなる。
目の前に広がる畑も、遠くの小山に見える一本の糸杉の木も、雨が激しくて見えにくくなってきた。
このままだと、ずぶ濡れどころか、服の中に入り込んだ雨で、体がふやけてしまいそう。
「イリス、あそこの小屋で雨宿りをしよう」
「うん。ウェスタ兄さま」
私の栗毛とは違って、美しい青銀の髪を低い位置で一つに束ねているウェスタ兄さまは、すぐ近くにある丸太小屋を指さした。
同意すると、すぐに私の手を強く引いてくれる。
二つ年上のウェスタ兄さまは、私の速度を気にしながら歩く。十二歳にして、完璧な貴公子みたい。
まぁ、エーグル辺境伯家の四男だから、貴公子といえば貴公子なんだけど。ちなみに私は、辺境伯家の末っ子。
「おじゃまします……」
丸太小屋のドアには鍵が掛かっておらず、中に入ることができた。
「あれ、ここって」
「覚えてたか? 前に領地に遊びに来ていたデリーと一緒に、かくれんぼで使ったことがあるよな」
ウェスタ兄さまの言葉に、デリーを思い出す。
王都から、数年間遊びに来ていた貴族の息子。詳しいことは良く知らないけど、ウェスタ兄さまと同じ年で、私たちは一緒に遊んでいた。
戦争が始まるから、というので、王都に戻っていってからは、どうしているのかは知らない。
「雨になるのかな」
そんなことを思っていたら、ポツポツと落ちてきた雨粒が、一気に激しくなる。
目の前に広がる畑も、遠くの小山に見える一本の糸杉の木も、雨が激しくて見えにくくなってきた。
このままだと、ずぶ濡れどころか、服の中に入り込んだ雨で、体がふやけてしまいそう。
「イリス、あそこの小屋で雨宿りをしよう」
「うん。ウェスタ兄さま」
私の栗毛とは違って、美しい青銀の髪を低い位置で一つに束ねているウェスタ兄さまは、すぐ近くにある丸太小屋を指さした。
同意すると、すぐに私の手を強く引いてくれる。
二つ年上のウェスタ兄さまは、私の速度を気にしながら歩く。十二歳にして、完璧な貴公子みたい。
まぁ、エーグル辺境伯家の四男だから、貴公子といえば貴公子なんだけど。ちなみに私は、辺境伯家の末っ子。
「おじゃまします……」
丸太小屋のドアには鍵が掛かっておらず、中に入ることができた。
「あれ、ここって」
「覚えてたか? 前に領地に遊びに来ていたデリーと一緒に、かくれんぼで使ったことがあるよな」
ウェスタ兄さまの言葉に、デリーを思い出す。
王都から、数年間遊びに来ていた貴族の息子。詳しいことは良く知らないけど、ウェスタ兄さまと同じ年で、私たちは一緒に遊んでいた。
戦争が始まるから、というので、王都に戻っていってからは、どうしているのかは知らない。