転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 私の前に、またしてもクレオメガが現れた。
 わかりやすくため息をついて、彼女の顔を見る。
 口をへの字にして、プルプルとしている姿は、チワワみたいでかわいい。
 かわいい、が、正直面倒だ。

 寮に戻ってきて着替えたのか、やたらゴージャスなドレスを着ている。
 キラキラ光ってまぶしいくらい。食事なんだからゴテゴテした指輪やらネックレスやらピアスやらは不要じゃないかな。

 そんな刺繍たっぷりの美しいドレス、食事で汚したら洗うの大変だし……。
 私は制服のままなのでまぁ、質素だ。
 制服の下に、デリーに貰ったムーンライトルビーのネックレスをかけるくらいは、許されたい。

「もちろん、私から近寄るつもりはないのですが」
「さっきも」

「さっきは、殿下から話しかけてきたので、あなたがおっしゃったように、ご挨拶を返していただけですよ」
「嘘! だって、側妃って言葉が」
「ああ」

 大きな声で話していたわけじゃない。
 だから、きっと拾えた単語で不安になったのだろう。
 女性同士としては、若干同情もする。

 家同士の婚約とはいえ、彼女は第二王子が好き。多分そう。
 それで、第二王子はどう思ってるか知らないけど、今日の様子を見るに、アホの女好きってところだ。
 こんなにかわいい子が婚約者なんだから、彼女で満足すりゃいいのに。

「私が今まで殿下の周りにいないタイプだったから、面白がったんでしょうね」
「確かに──あなたみたいな、反抗的な人間は、殿下の周りには不要だもの」
「それって、イエスマンしかいらないってことです?」
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