転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「イエスマン?」

 会社でもなんでも、権力者の周りにイエスしか言わない人間だけになったら、もう終わりだ。
 経営は緩やかに破綻するだろうし、国は早急に食い物にされる。

「諫言する人がいない、ってこと。まぁ私は別に、第二王子殿下に諫言する気も、その必要もないけど」

 それは派閥の人間がすることだ。
 私たちはどちらかと言えば、デリーや側妃が何か良くないことをしそうになれば、注意する立場。
 第二王子や正妃が何かしでかすなら、まぁ大歓迎といったところか。

「それに、私には婚約者がいます。ご存じでしょう? その立場から、どうして第二王子殿下に近付く必要があるかしら」
「そんなの! キュノ殿下が素敵だからに決まっているわ」

 思わず、ぽかんとしてしまった。
 彼の姿を思い出してみる。

「金髪碧眼……、まぁ顔は……イケメンか。でも中身はなぁ」

 ぶつぶつと言えば、彼女は不満そうに私を見た。

「何をブツブツ言ってるのよ。キュノ殿下の美しさ、分からないの? まぁ第一王子のあの黒髪黒目という地味さを見慣れていると、美しすぎて驚いたのでしょうけれど」
「は?」
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