転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 クレオメガの発言に、今度は私が文句を言う番になった。

「デリーのどこが地味だってのよ。あの艶やかな黒髪に、ガラスを張り巡らせたような美しい黒目。顔立ちだって、整っていて派手なだけの顔とは違う品の良さがあるわ」
「なっ。誰が派手なだけで品がないと」
「そこまで言ってないわよ。あなたがそう思ってるんじゃないの?」

「し、失礼ね!」
「どっちが失礼よ! 関係ないんだから、近寄ってこなければ良いじゃない」
「関係あるわよ。キュノ殿下が興味を示されたのに、喜ばない女なんているわけがないわ」
「ここにいるっていうの!」

「なによ!」
「なんだっていうのよ」
「うるさーい!」

 私とクレオメガの声がどんどんと大きくなり、今にも取っ組み合いが始まりそうに──エーグル辺境伯領だったら、すでに始まってたわね──なったところに、寮母先生が登場した。

「まったく。揃いも揃って、淑女の鏡であるべき第一王子と第二王子のご婚約者がなんですか。二人とも反省のために、今日は湯浴みを今すぐして、部屋から出ることはなりません」
「そ、そんな。寮母先生、私のお茶会の予定が」
「こんな騒ぎを起こした後に、お茶会を許すわけがありませんでしょう」

 この寮母先生は、前王妃の侍女長をされていた方で、規律に厳しい方だ。
 例え正妃派のトップの令嬢のであっても、そして王子の婚約者であろうとも、目こぼしすることはないらしい。
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