転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第22話 週末のタウンハウス

 あれから順調に本を読み進め、借りた六十七冊は四日ほどで読み終えてしまった。
 次は百冊を纏めて借り、週末を迎える。

「イリス、明日は王城で待っているね」
「ええ。一人じゃ不安だから、ちゃんと出迎えてね」
「もちろんだよ」

 この世界も週休二日制だ。なので学校も週末は二日間のお休み。
 一日はタウンハウスで過ごし、もう一日は王城で側妃殿下にお目にかかることになっている。

 我が家の馬車──王都の中ではさすがに走竜ではなく馬が車を牽く──でタウンハウスへ。
 ウェスタ兄さまと二人馬車に乗り込むと、十五分ほどでタウンハウスに到着した。

「イリス、ウェスタお帰り」
「お婆さま、ただいま戻りました」
「お婆さま! ただいま!」

 ウェスタ兄さまは礼儀正しく挨拶したというのに、私ったら嬉しくて抱きついてしまった。
 でもそんな私を、皆が優しく受け入れてくれる。ありがたい……。
 これ、他家に嫁に行ったら許されないよねぇ。他家、というか王家なんだけどさ。

「お爺さまは?」

 お婆さまから体を離しつつ、尋ねる。
 
「もうすぐ戻ってくるわ。ウェスタに稽古付けるって張り切ってたわよ」
「やった!」

 普段タウンハウスにいるお爺さまだから、なかなか稽古付けて貰えないもんね。
 戦神と呼ばれたお爺さまの稽古、相当厳しいらしけれど、うちの兄さま達は嬉しくてたまらないって言ってた。

 なんでも、教え方も上手いらしい。お爺さまやお父さまよりも強いと言われているアレ兄さまは、教えるのが下手だってウェスタ兄さまが笑ってたのを思い出す。

「さぁ二人とも、着替えていらっしゃい。ゆっくり週末を過ごすのよ」
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