転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 実は側妃とじっくり話したことは、まだないのだ。
 デリーが、王都に来たときに会えば良いなんて言うので、ついついその言葉に甘えてしまっていたけど、冷静に考えると、なかなかにあり得ないよねぇ。
 でも、会ったら「王妃教育しましょう」みたいに言われたら嫌だな、なんて思ってしまい、避けていた。

 今回も、側妃からそんなことを言われるのかも、なんて思っている。
 そろそろ年貢の納め時なのかもしれない。
 納めたくないよぅ。

「お嬢さま、王城は伏魔殿と言います。どうぞ気を引き締めて」
「ええ、そうね。正妃派の人間もたくさんいるだろうし……。できるだけ、王城の人目のあるところにいるようにするわ」

 デリーが、王城の図書館に入れるようにしてくれると言っていたので、それはとても楽しみだしね。
 それに、デリーとの婚約が発表されたあの日見た、王城の庭。

 あそこの担当庭師とは話をしてみたい。
 とても美しい庭だったので、ゆっくり鑑賞しつつ、いろいろと技術や狙いを聞いてみたいのだ。

「お嬢さま、お城ではできるだけデリー様と一緒にいるようにしてくださいね」
「そうね……。それは確かにそうだわ」

 また第二王子に絡まれたらやっかいだしね。
 なんて思ってたのが、いけなかったのかなぁ。
 王城で、いきなり第二王子に会ってしまうだなんて、誰が予想しただろうか。
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