転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 私が今日登城することは、周知されていた。つまり、私が来たら連絡しろと門番に彼が指示を出すことも可能だったのだ。

「何をしたいかだと? そんなのは簡単だ。イリス・エーグル、お前を俺がわざわざエスコートしてやろうと」
「あ、不要です」

 結構です、なんて曖昧な言葉を使ってしまうと、つけ込まれるからね。ここはバッサリとお断りをするのが一番良い。

「ふ、不要だと?」
「そりゃそうですよ。私の婚約者は第一王子殿下であり、あなたではありませんから。そもそも、どうして私をエスコートしたいんですか? 人のものを欲しがるなんて、五歳児以下ですけど」

「なっ! ふ、不敬だぞ!」
「では、国王陛下から、我が父へ通達願います。第二王子殿下に無理にエスコートをされそうになったので、それを断り、かつその理由を問うたことが不敬罪である、と」

 こちらは馬車の中なので、腕力に訴えられる心配はない。
 加えて、どう考えても向こうがおかしいことをしているので、ちょっと強気だ。
 それに、この程度が不敬罪になるというのなら、お爺さまもお父さまもアレ兄さまも動員して、城を攻めて貰うだけのこと。

「あっはっは。キュノの完敗だな」
「デリー!」
「お待たせ、僕のお姫様。変なのに絡まれて大変だったな」
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