転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
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 自由に動き回っても良いという医者の許可が下りるまでに、一週間もかかってしまった。
 
「今日から復活です!」
 
 朝食の時間に、そう言って食堂に登場した私を、家族が皆順番に抱きしめてくれる。本当に愛されているな、私。
 そして前世の記憶を取り戻した今、目の前の朝食に対して思うところはある。
 パンとスープ。それにサラダ。
 
 品数は全然良いの。だって朝食なんて日本人の多くが味噌汁に卵かけご飯か納豆ご飯だけで、場合によっては味噌汁がなくても、それで済ませてたりするじゃない。でもね。味よ、味。

 味が──しない。

 パンは硬いし、スープとサラダは良く言えば素材の味。でもその素材の味もそんなに強くない。
 おかしい。

 ここは乙女ゲームの世界なんでしょ? だったら、日本人好みの、美味しいご飯とか出ても良さそうなものじゃない!
 でもまぁ仕方ない。
 よくある転生者チートとかいうので、美味しい料理をいつか食べられるようにしてみせるわ。
 
「復活と言っても、しばらくは屋敷の中にいるのよ」
「テレイアの言うとおりだ。領内に行きたいかもしれないが、もう少し様子を見るんだぞ」
 
 お父さまとお母さまの言いたいこともわかるので、ここは大人しく言うことをきくことにする。
 今は家庭教師の授業もストップしているので、その間に図書室で農業の本とかを読んでおこうと思っているのだ。
 
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