転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「ううん。大丈夫よ。こちらの馬車に乗る? それともあなたの乗ってきた馬に乗った方が良いかしら」
「さすがにそのドレスで馬に乗せるわけにはいかないな。そちらに乗っても?」
「おい!」

 完全に無視をされていたキュノ第二王子が、声を上げる。
 あ、まだいたんだ。

「キュノ。お前がどういうつもりか知らないけど、これ以上するなら、父上を通じて正妃陛下に苦情をいれさせてもらう」
「う、うるさい! そんなことしても無駄だ! 俺が全てを得るんだからな」

 そう言って、彼は自分が乗ってきた馬車に飛び乗ると、この場を去って行った。

「え、かっこ悪……」

 思わず口にしてしまったけれど、馬車に一緒に乗っていたフェデルも、デリーも、私の言葉に声を上げて笑う。
 門番の二人も、肩を震わせていた。
 きっと皆、同じことを思ったのだろう。

「さ、母上が待っている。行こう」

 こうして、昨日のうっかりしたフラグをしっかりと回収してしまった私は、デリーに連れられて、側妃殿下の待つ部屋に向かったのだった。
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