転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「母上」
「言わないわよ。それに、嫁いびりみたいなこともしないから、安心してちょうだい」

 やだ。私顔に出てたかしら。

「イリス、何かあればあとで絶対に僕に言って」
「わかったわ。何もないと思うけど」
「ほら、早く早く」

 そう言って急かして追い出してしまった。
 部屋には側妃と二人きり。何故か侍女もお茶を淹れた後部屋を退室した。
 入り口の外には、警備がいるんだと思うけど。

「改めまして、レテシア・ホムルグ・ハッグスです。あなたとゆっくりお話をするのは初めてね」
「イリス・エーグルです。以前のパーティではご挨拶しかできず、申し訳ありません」
「いいのよいいのよ。そうした時間を用意しなかった王家の問題だわ」

 ホムルグは、側妃の実家の家名だ。この国では、王家に嫁いだ場合にのみ、実家の家名を入れ込むことになっている。
 これは、後ろ盾という意味合いがあるそうだ。なるほど。

「それで、側妃殿下」
「レテシアで良いわ」

「ありがとうございます。では、レテシア殿下」
「ええ。今日あなたを呼び出した理由よね。それは、デリーのことを話しておこうと思って」
「デリーのことを……?」

 レテシア殿下は、紅茶をゆっくりと飲み込み、私を見つめて口を開いた。
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