転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第24話 デリーのこと

「私と陛下のことについて、あなたはどのくらい知っているかしら」
「えぇと。母に……伺っております」
「そう。テレイアが話したと言うことは、だいたいのことは分かっているのね」

 テレイアとはお母さまのことだ。
 側妃は──レテシア殿下は、するりと立ち上がると、窓の近くに行く。私もその後ろを追った。

「私は陛下にこの城に連れて来られ、すぐに身ごもったわ。それがデリー。デルピニオよ」

 そのあとすぐに正妃が嫁いできて、二歳差で第二王子キュノが生まれている。
 私は、こくりと頷いた。

「あの子は生まれたときは元気だったけれど、だんだんと体を壊すようになってね。五歳の頃には、もうずっと寝込むようになったの」
「デリーが……そんな」

 今の彼からはとてもそんなことは想像つかない。
 領地で一緒に遊んだ彼は、馬を乗り回し、ウェスタ兄さまと一緒に走竜にもチャレンジしたりしていた。
 
「六歳になったときに、大きな熱で生死をわかつようなことがあって」

 窓にこつりと手をかける。彼女のその手が、少しだけ震えていた。
 きっと、当時のことを思い出しているのだろう。

「もう何週間も高熱にうなされていたの。それが、ある日目覚めてこう言ったの」

 ゆっくりと私の方を見る。

「これは異国の病だから、異国の医師を呼んできてくれ、と」
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