転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 デリーはそれだけを言うと、また眠るように熱にうなされてしまったらしい。

「もちろん、医師にきちっと調べさせていたわ。でも、まさか病に異国も何もあると思わなかったから、大急ぎで各国の医師を呼び寄せたの」
「それで」

「マージョナル帝国の医師が、その病を当て、すぐに薬を出してくれたわ。投薬して三日で、熱はもちろん、不調なことが全て消えていったのだから、驚いたどころではなくってよ」

 マージョナル帝国の医師ということは、帝国の特有の病か、あるいは、帝国で知られている、他の国の病か。
 ──例えば、正妃の母国、セルート大公国とかの。

「その病はどのような病だったのですか?」
「グレズストン病、と言っていたわ」
「グレグストン……」

 聞いたことがない。
 マージョナル帝国の本をあとで調べてみることにしよう。
 口ぶり的に、レテシア殿下はあまり詳細を理解してはいないようだ。

「それでね。その後あの子は、身を守るためにエーグル辺境伯家にしばらく隠れ住みたい、と言い出したの」
「我が家……ですか」
「ええ。どうして突然エーグル辺境伯家なのかとも思ったけれど、もともと私とエーグル辺境伯夫人であるテレイアは従姉妹だからかしら、と」

 デリーがそれで王都から遠い、辺境伯領の中でも我が家を選ぶのは理にかなっている。
 私が彼でも、その選択肢があるのであれば、そう考えるだろう。つまり──

「デリーは、一連の病が、命を狙われてのことだと考えた、ということですよね」
< 114 / 168 >

この作品をシェア

pagetop