転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 私の言葉に、はっとした表情で私を見上げる。

「二人のときは、そう呼んでもよろしいでしょうか」
「ふふ。デリーがいるときも呼んでちょうだい。あの子もきっと喜ぶわ。もちろん、私もね」

 私たちは抱き合った。

「イリス。私もそう呼んで良いかしら」
「もちろんですわ、お義母さま」

 クリノリンのせいで少しだけ腕に力が必要だったけれど、お互いに抱き合い、そして笑い合った。

「そうそう。あなたが開発したというこのクリノリンに、ブラジャーという下着は、本当に素晴らしいわね。派閥の女性陣は皆着用しているわ。最近では、正妃派の女性がどうにか手に入れたがっているとか」

「まぁ。正妃派の方が。そこまでたどり着いてくれましたか。でも、売るにはもう少しあとのタイミングがよろしいでしょうね」
「そうねぇ。春のパーティの後くらいが良いかしら」

「春のパーティでは、こちら側はクリノリンを使った、素敵なドレスを皆で」
「ええ、それが良いわ」

 少しだけ、貴族女性のような会話をする。
 デリーを殺そうとしたり、私を殺そうとしたりする、正妃の一派や、あのうっとうしい第二王子に対して、親切にするつもりはないのだ。
 だって、私はデリート穏やかに生きていきたいんだもん。

「そろそろ時間かしら。このあと庭を見たいと言っていたわね」
「はい! そうなんです。あの王城の庭が素晴らしいと思って」
「デリーが案内する気満々だったから、同行させてあげてちょうだい。そのあと、庭師を紹介させるわ」

 その言葉のタイミングで、扉が開く。

「イリス、行こうか」
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