転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 そのシーズンがいつか分からないけど、ここにあるバラ、一季咲きと四季咲きの花がまざってるもん。
 一季咲きは、年に一度のシーズンしか咲かない。四季咲きは、最低気温が十五度以上あれば、何度も咲くバラってこと。

 四季咲きは、剪定したら数十日で花を咲かせるから、花を咲かせる必要があるときに、ある程度逆算ができるけど、一季咲きはそうもいかないんだよね。

 まあ、だからこそ、奇跡ってなったのかもしれないけど。
 うーん。あ、でもあれか。うまいこと温度調節がをして植え替えれば……。植え替えってよりも、鉢ごと植え込まないと咲かない可能性はあるか。

「イリス?」
「あ、ごめんなさい。あまりにも綺麗で、つい」
「綺麗だもんね」

 デリーが私の腰を引き寄せる。手が腰に回る。
 前世だったら、そこに触れるな! と言うくらいぶよぶ──いや、ふっくらしていたけど、今の私はほっそりスリムなので、触られても問題ない。あ、もちろん好きな男性に、っていうのが前提だけど。

「せっかくのローズガーデンデートなんだし、もっと近くに」
「デ、デリー」
「ん?」

 ん? じゃなくってさ!
 そのイケメン顔を甘く蕩けさせて私を見てこられると、その──

「イリス、顔赤いけど、具合悪い?」
「具合は……全然悪くない」
「熱は」

 こつん、と彼のおでこが私のおでこに触れる。
 いや、この体温の測り方、絶対わからないよね。体温高いとか低いとかわからないよね.


「な、ないから! その! デリーが」
「僕が?」
「デリーの顔が、格好良く……て……」

 最後が恥ずかしくて小声になったのは、許されたい。
 私の言葉を聞いた瞬間、デリーは私を引き寄せて抱きしめた。
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