転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 辺境伯家の図書室は広い。
 小学校の図書室くらいはあるんじゃないかな。
 その中から、農業関係っぽい本を手当たり次第とる。脚立が置いてあるけど、それでも届かない本は、フェデルが取ってくれた。
 
「お嬢さま、本が増えてまいりましたので、ワゴンを取ってまいりますね」
 
 図書室に置いてある、給食当番で使うようなワゴンを持ってきたフェデルは「これなら、もっと増えても大丈夫です!」と力強く言ってくれる。
 
「何度も来るのも面倒だし、最初にたくさん持ってっちゃお」

 目に入ったものをポイポイワゴンに載せていく。
 あ、世界地図とかもあるんだ。国内の地図、それに領内の地図も一緒に引き抜く。

「よし、こんなもんね!」

 ワゴンが重すぎたので、男性の使用人に部屋に運んで貰うということで、私とフェデルは先に部屋でお茶をすることに。

 部屋に届けられた本を開くと、不思議なことに全てが日本語で読めてしまう。目に入る文字はこの国のものなのに、脳にインプットされるのは日本語なのだ。まるで私の目に優秀な翻訳機が入ってるみたい。

 しかも、十歳のイリスが知らないはずの単語も、スラスラと理解できる。これはもしや、例のチートのおかげ?
 そう思って思い返してみると、 『ガーデニングや園芸、農業に関する知識を得る力と、その能力を最大値にして』と願ったのだった。つまり、その知識を得るためには多言語理解が必要になる。私この世界の言語全部いけるのでは。

「確認せねばっ」
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