転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 借りてきた言語がどこの国のものかを調べたくて、確認したのだが、それが幸いした。

「王城の図書館だからね。まぁ古代語の本があることは不思議じゃない。でも、どうしてちょっと折り目が付いちゃってるのかしらねぇ」

 どうせ誰も読めないと高をくくったのだろう。
 各国の古代語なんて、その国の王族でも読めるか読めないかというレベルだ。
 逆に言えば、その国の王族であれば、読める可能性も高いのだけど。

「んふふ。詰めが甘いんだよねぇ」

 季節の花を植えるには、いつ花が咲くかを計算しないといけない。
 木を剪定するときには、剪定したあと伸びてくる姿まで計算しないといけない。
 毒を含ませるには、その毒の入手元があくまでも分からないようにしないといけない。

「私とデリーを殺そうとした正妃には、しっかりとご自身の仕事を全うして頂く必要があるんだなぁ」

 手にした古代セルート語の本を改めて開く。
 それと共に、マージョナル帝国の医学書も開いていった。

「デリーの熱病の名前はたしか……」

 確かに、マージョナル帝国の医学書にその名は書いてある。

「グレズストン病。これね」

 原因はハイネ菌による郷土病の一種で、ハイネ菌が体内に入ると、時間をかけてゆっくりと体を蝕んでいく。
 やがて熱が上がり続け、長いときは二年ほど高熱が続くらしい。

「こっわ」

 それが小さな子どもだったとしたら。
 後遺症があってもおかしくはなかった。

「毒殺だと怪しまれるから、だんだんと体が弱るものを使ったのね」
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