転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 グレズストン病は、それがそうとわかれば、抗ハイネ菌薬を飲めば、遅くとも一週間で完治する。
 ただ、グレズストン病という病自体が郷土病のため、見抜ける医師があまりいないという。

「このハイネ菌が、セルート大公国のある地域で発生しているものだということが、ポイントよね」

 マージョナル帝国とセルート大公国が接している地域。そこにある小さな村でのみハイネ菌が、存在している。
 そんな馬鹿な、と思ってしまうけれど、どうやらそこで採れるハイイモの菌らしい。

 ハイネ菌自体は空気に触れるとやがて死んでしまう菌らしく、菌を有している状態でハイイモを移動させるか、または菌そのものを器に閉じ込めて移動させるしか、感染させる方法はない。

「だからこそ、その地域でしか発病していなかったってことなのよね」

 わざわざ菌を持ち出そうとするのは、悪意のある人物のみだ。
 それも、そこでしか採れないということを理解して、かつ、相手が知り得ないとおもう場合。

 毒として使うにしても、維持するのが大変なので、あまり選ぶ手段でもないだろう。それも、あまり知られていない理由の一つだ。

「あとはこれを、どうするかよねぇ。別に正妃や第二王子の命が欲しいわけでもないしなぁ」
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