転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「さぁ……見慣れない女生徒ですが、イリス様はご存じで?」
「私も見たことがないのよね」
少なくとも側妃派と中立派の人間の顔は全て覚えている。
正妃派もたいていの顔は名前と共に一致しているが、彼女はみたこともない。
「貴族名鑑に載っていない方ならあるいは」
年に一度、貴族名鑑が発行される。
そこには全ての家の者が似顔絵と名前が共に記載されるのだが、養子などで年の途中で増えた者については、次の発行まで掲載が待たれるのだ。
「あとで調べさせてみるわ」
「お差し支えなければ、共有いただけますと」
「もちろんよ、ルイベ様」
なんて思っていたのだけれど。
「きゃっ! 痛いっ!」
突然私の横で転んだ女生徒の声に、覚えがあった。
「大丈夫? 何かに滑ったのかしら?」
首を傾げながら声をかけると、こちらを見た顔を見て十数分前の記憶が蘇る。
「あなた──」
「酷い! 私が下級貴族だからって、足を引っかけるだなんて」
「は?」
彼女はそう言うと、すっと立ち上がって走り去っていった。
そのあまりの素早さに、思わず待って、と手を伸ばしてしまうほど。
「何だったのかしら。わかる? ルイベ様」
「さぁ……」
隣にいたルイベ嬢と二人、顔を傾げてしまう。
そんな不思議な女生徒との縁は、何故かその後も続いてしまったのだ。
「私も見たことがないのよね」
少なくとも側妃派と中立派の人間の顔は全て覚えている。
正妃派もたいていの顔は名前と共に一致しているが、彼女はみたこともない。
「貴族名鑑に載っていない方ならあるいは」
年に一度、貴族名鑑が発行される。
そこには全ての家の者が似顔絵と名前が共に記載されるのだが、養子などで年の途中で増えた者については、次の発行まで掲載が待たれるのだ。
「あとで調べさせてみるわ」
「お差し支えなければ、共有いただけますと」
「もちろんよ、ルイベ様」
なんて思っていたのだけれど。
「きゃっ! 痛いっ!」
突然私の横で転んだ女生徒の声に、覚えがあった。
「大丈夫? 何かに滑ったのかしら?」
首を傾げながら声をかけると、こちらを見た顔を見て十数分前の記憶が蘇る。
「あなた──」
「酷い! 私が下級貴族だからって、足を引っかけるだなんて」
「は?」
彼女はそう言うと、すっと立ち上がって走り去っていった。
そのあまりの素早さに、思わず待って、と手を伸ばしてしまうほど。
「何だったのかしら。わかる? ルイベ様」
「さぁ……」
隣にいたルイベ嬢と二人、顔を傾げてしまう。
そんな不思議な女生徒との縁は、何故かその後も続いてしまったのだ。