転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 その言葉に、お婆さまは重要さにすぐに気付き、目の色を変えた。

「旦那さまを呼んできた方が良いかしら? あぁ、あとウェスタと……デリーも今日来るって言ってたわ」
「お婆さま落ち着いてくださいな。これをもって、応接室に参りましょう」
「そうね」

 タウンハウスの応接室は、周りに音が漏れないように細工がしてある。
 そこにお爺さまとお婆さま、そしてウェスタ兄さまにデリーが、地図の周りに立っている。

「これは、この地図の中の高低差を示しています。お爺さまにお借りした調査部の方に調べて頂きました。それと同時に、私の方から側妃派と中立派の生徒に、山や谷などについての高さの質問をしました」
「ほう。目端の利く生徒はいたか?」

 お爺さまが私の意図に気付き、にやりと笑う。

「ルイベ・ホシイイ伯爵令嬢と、ゴナ・ワラント侯爵子息くらいでした」
「ふむ。その二つの家のことは覚えておこう」

 つまり、各領地の山やら谷やらの高さ深さを聞く、なんて、一歩間違えば敵情視察となると理解しているかどうかだ。
 もちろんそこに何かをふっかける意図はないけど、そうしたことに対して、敏感な家かどうかは、今後の付き合いの上で重要になってくる。

「どちらも、側妃派の家門でしたので、安心ですわね」
「武門の家は、今年はあまりいなかったか」
「ええ。王妃派側に三家ほど。こちら側にはおりません」

 武門の家が、それに気付かなかったら、お爺さまから相当なお叱りがあっただろうから、良かった。
 それよりも重要なことがある。

「それよりも」

 ちらりとデリーを見てから、口を開く。

「王家が出している地図が、地形が合わない部分があるのですが」
< 133 / 168 >

この作品をシェア

pagetop