転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「ん? デリー目をこすっちゃだめよ。どうしたの?」
「なんか最近チカチカしてね」
「何かの病気の前触れかもしれないから、きちんとお医者様に見て貰って」

 何度もまばたきをしながら、デリーは頷く。
 大きな病気の前触れじゃないと良いんだけども。

「イリス」
「なに?」
「心配してくれてありがとう」

 ちゅ、と私の頭頂部にキスを落とす。
 私が髪の毛をつねにひっつめているので、彼はいつもキスは頭頂部なのだ。
 汗臭く……ないよね……? 汗かくようなこと、今日はしてないし。

「ベルネ男爵令嬢は、一体何者なのかしらね。最近引き取られたと言っても、この貴族学校に入るには、最低限のマナーなどは求められると思うんだけど……」

「まぁでも、試験があるわけでもないからね。貴族家の人間というだけで、最低限のマナーも知識もある前提だ。それがなければ、卒業ができないだけで、学校側としては困ることもないんじゃないかな。ずっと学費払って貰えるし」

 ウェスタ兄さまの言葉に、納得してしまう。
 
「確かにそうか。私としては、彼女が私たちの周りで騒がなければどうでも良いし」
「そうそう。あ、今から図書館? ウェスタは先生に呼ばれてるから、僕が付き合うよ」

「デリー任せた。イリス、また明日な」
「先生に呼ばれただなんて、ウェスタ兄さまったら、何をしたの?」
「僕が出来が良すぎて呼ばれてるんだよ」
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