転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第4話 兄さま達に溺愛される

 僕が前世の記憶を取り戻したのは、熱を出したあの日だった。
 この世界が、妹がやっていた乙女ゲームの中だと気付くのにそう時間がかからなかったのは、実は僕もそのゲームにハマっていたからだ。
 僕はラノベ好きのオタクで、妹がやたらとプレゼンしてくるものだから、試しにプレイして──まんまと悪役令嬢イリス・エーグルのファンになってしまった。
 イリス・エーグルは美人で、頭が良くて、機転も利く。民を思っての施策を考え、王太子に提案していた。まさに王妃の器。なのに、王太子である第一王子は彼女を疎み、男爵の庶子であるヒロインとイチャイチャしてしまう。
 正直意味がわからない。あんな素敵な婚約者がいながら、あざとさしかない女に浮気するなんて。
 だから決めたんだ。
 僕はこの世界で絶対に、イリス・エーグル、君を守るんだって──。
 
    *****

「嘘でしょ」

 各国語の教本を一度読む。もともとチートで読めていたので、それは形だけで良かった。
 でもまさか。
 他の本を一度読んだだけで、中身を覚えてしまえるだなんて、一体誰が予想しただろうか。

「イリスは天才だったのか」

 と、一番上のアレウス兄さま、アレ兄さまが言えば、二番目のメルクリウ兄さま、メル兄さまが私を抱きしめる。
 その横から、三番目のテミー兄さまが頭を撫でて、四番目のウェスタ兄さまが、おやつのリンゴの甘煮を私の口に入れる。
 完璧なる布陣で甘やかされているのが現状だ。
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