転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 くすくすと笑いながら別れる。どうやら、本当にそうらしく、次回の授業で剣舞を皆の前でやって欲しいと依頼されているらしい。その打ち合わせだとか。
 剣舞ねぇ。

 ウェスタ兄さまは舞のための剣技より、実践の方が綺麗な動きをするのにな。
 まぁ、それよりなにより。

「ウェスタは武器を開発するのが、一番得意だけど、それはここではナイショだもんな」
「そうなのよね。見せつけられないのが、残念だわ」

 我が領地で使っている武器の利便性を上げているのは、ウェスタ兄さまの発案によるものが多い。
 現場で皆と戦いながら、どんどん開発をしていくのだから、その力はある意味戦神に匹敵するんじゃないかな。

「今日は何系の本を借りるの?」
「地形の本と天候関係の本。それから建築関係。それでここの図書館は全部制覇だわ」
「……あっという間だなあ」

「三分の二は、領地の図書室と本が被っていたんだもの」
「それであっても、だよ」

 読めばつっかえることなく、スラスラと頭に入ってくるチートのお陰です。
 それは誰にも言えないけれどね。

 デリーと一緒に図書館に行き、いつものように本をワゴンに乗せていく。
 数日おきに来るので、司書の先生にも、もうお馴染みの行動になっている。

「あ、この地図」

 それは、この世界の風の流れや気候などが書き込まれたものだった。
 こうした書かれ方は、前世とは全然違うから、慣れるまで少し時間がかかったけど、わかってくると割と面白い。

「……やっぱり」
「イリス?」
「デリー。一つ、お願いがあるの」
< 140 / 168 >

この作品をシェア

pagetop