転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第30話 温室技師と正妃

 デリーに頼み、王城の温室技師を紹介して貰った。
 技師は平民で、貴族の派閥なども関係ない人間なので、安心して相談ができる。

「領地に、簡便に温室を作りたいんだけど、相談できるかしら」

 そう問えば、とても前のめりで話を聞いてくれた。
 技術者というのは、どの世界でも同じ性質なのかもしれない。

「風の影響をあまり受けない地域だということが、はっきりとわかったの」

 それを確認したくて、等高線図を作ったのだ。
 盆地になっていないか、大きな山が観測できない位置にないか。
 季節による空気の流れについては、図書館の本が大いに役に立った。

「だから、気温の変動や雨量に左右されないように、温室をたくさん作りたいとおもっているの。我が領地には、タケッティがたくさんあるから、それを使って、上手いことできないかしら」

 本当はビニールハウスを作りたかったけれど、ビニールやポリプロピレン、前世で温室を作るときに使っていた農業用ビニールなんて素材は、この世界にはない。

 けれど、ガラスを薄く軽くする技術は存在している。
 しかもそれは、思ったよりも安価で手に入れることができるのだ。
 鉄で骨組みを作るとなると、領民には作れないけれど、それをタケッティで代用できたら、きっと普及しやすいだろう。
 

 先ずは我が家で作って、それから私が使わせて貰えることになっている、閑地に。
 そこで結果を出せれば、領民に見せて広めていこう。
 そうすれば、一年を通じて生産のコントロールをすることも可能になるのだ。
< 141 / 168 >

この作品をシェア

pagetop