転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 デリーの言葉に、肩を小さくすくめる。
 あまりにもお約束通りに動いてくれたので、この国の王族大丈夫かな、って心配になってしまった。

「これで、正妃派がどう動くか、よね」
「ああ」

 壇上のヒュブリア・ベルネ男爵令嬢を虐めただのなんだのと、第二王子は言ってる。
 まぁ確かに、いろいろ諫言はしていたわね。でも、婚約者としては当然。

 愛妾程度には許そうと思ってたんじゃないかな。
 だから、立場をわきまえるように強く出てたんだと思う。

 彼女が──というよりも、彼女の家が本気になれば、男爵家なんて多分あっという間に潰されちゃうもん。

「キュノ様ぁ。あんまりクレオメガ様を責めたらぁ、かわいそうですぅ。彼女なりに、キュノ様の『立場』を愛しておられたのですからぁ」

 わぁお。
 自己紹介乙、って言われちゃうやつじゃないの。

 彼女、デリーにも粉かけしようとしてたし、第二王子の側近にも色目使ってたの見かけたわよ。
 第二王子をオススメしてからは、どうでもよくなったけど。

「なんてやさしいんだ、ヒュブリア。やはり正妃はそなたしかいない」

 その言葉に、私とデリーは顔を見合わせる。
 正妃、とは国王の正妻のことだ。

 この国では、まだ王太子は確定していない。それを、学内のパーティとはいえ、公の場で言ってしまった。
 これはあとで、少々荒れるかもしれない。

「婚約破棄、承りましたわ。それでは失礼致します」
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