転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第32話 領地の温室と植栽

「驚いた」

 タウンハウスでお爺さまやお婆さまを交えて、デリー達の今後の動きについて相談したあと。
 私とウェスタ兄さまは走竜が牽く竜車で、領地に戻ってきた。

 そして領地に入って最初に見た光景は、温室のパレードだ。
 あちらこちらの農地に、温室が作られているのだ。しかも、私がイメージしていたものよりも、ずっとビニールハウスに近い。

「お嬢さま! これ、お嬢さまの発案だとか!」

 領内に入り、速度を落とした竜車に、領民の声がかかる。
 窓から体を乗り出し手を振って、頷いて見せた。

「これなら、天気に左右されないでしょ!」
「ありがたいです。温度管理のためのタケッティの炭も、無料で提供頂けると、テレイア様からお達しがありました」

 お母さまの仕事、早い。
 竹炭もこの世界で見たことがなかったので、作り方を手紙に書いて送っていた。

 それが、タケッティの炭。長いな。
 私は再度大きく手を振る。

「気付いたことがあったら、なんでも相談して!」
「ありがとうございます。エーグル辺境伯領で農業をしていて良かった」

 その言葉に、涙が出そうになる。
 ここの領地で良かった、そんな最高の褒め言葉を貰えるなんて、思ってもみなかったから。
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