転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 図書室の本を読み始めて二週間。屋敷から出られない日々で、特にすることもなかったので、読書は捗りまくった。
 そうして、農業関連書籍やら、地理の本やら、最初にワゴンに載せた分は読み尽くしてしまい、新たな本を取りに図書室に向かう途中で、兄さま達に遭遇したのだ。
 せっかくだから、と近くの部屋で五人でお茶をすることにしたんだけど、その時に、本が山積みになっているワゴンだけ先に図書室に向かわせたの。
 その、私が読んだという本の山を見た兄さま達の反応が、これだった。十歳で多言語の本を読みこなしていたら、そりゃぁびっくりするよね。
 
 四人はこれから剣の稽古らしく、動きやすい格好をしていたのだけど、それがまた格好良くてね。
 前世の記憶を取り戻す前は、特に気付きもしなかったけど、四人とも見目麗しいわけだ。これ、もしかして兄さま達も乙女ゲームの攻略対象者なんじゃないかな。例の乙女ゲーム、詳細知らないけど。

 我がエーグル辺境伯家は、我がハッグス王国の南東に位置する大きな領地で、アジェスティ王国と接している。
 実は去年まで、アジェスティ王国とは戦争をしていて上二人の兄さま達は、前線で指揮を執っていた。
 ……そんな状況で、ここが乙女ゲームの世界だなんて、一体誰が気付くっていうのよ。あの神さま本当にアレよね、アレ!
 辺境伯家って言うだけあって、我が家の男性陣は全員が武人。お父さまやお爺さまなんて『軍神』とまで言われてるの。しかも、長兄のアレ兄さまは、その軍神二人より強いとか。もうそっちが無双、チートじゃん? 私はお呼びではないのでは……。でもそれだとたぶん、ゲームの種類変わるな。
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