転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「良かったな、イリス」
「うん。私は兄さま達みたいに戦えないから」
「イリスはしっかり戦ってるだろ。気候と、自然と。それは、僕達ができないことだ」

 ウェスタ兄さまは、そう言って私の頭を撫でてくれた。
 嬉しくなって、ウェスタ兄さまの肩に頭を押しつける。

「デリーがここにいなくて良かったよ」
「あら、なんで?」
「絶対嫉妬されるからな」

 くく、と笑いながら、ウェスタ兄さまは私の頭をもう一度撫でた。

「よく頑張った。偉いよ」
「……ありがとう」

 神さまに貰ったチート能力が元だけど、それでもできることを考えて、動いて良かった。
 デリーの婚約者だったから得られた伝手でもあるのだ。
 改めて、それも感謝しないと。

 そんなことを思っているうちに、うとうととしてしまった。

    ***

 帰りの竜車から、もっと領内を見ようと思っていたのに、うっかり寝てしまった。
 痛恨のミス!
 そんなわけで、家族との感動の再会シーンを終えた私は、動きやすいワンピースに着替えて領内をまわることにした。

「お嬢さま! タウンハウスから送ってくださったショウユウとミイソ、使いこなせるようになったんで、今夜楽しみにしていてください!」
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