転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 勝手なことをしてしまった、と少し恐縮していたけれど、とんでもない。
 私のそんな言葉をしっかりと覚えてくれていたのだ。これで、春までの準備が一歩も二歩も進んだというもの。

「プロメスさん、あなたお弟子さんやご家族を全員連れてきているのよね」
「はい。お話を伺って、長丁場になりそうだと思ったんで」

「そのまま、うちの領地に移住しない? 王城で働いていたときよりも、待遇は良くするわ」
「待遇、今でも十分ですが、さらにとは……。嬉しい限りです」

 この後、王城には戻らない方が良い。
 そうはっきり言うことはできなかったけど、快諾してくれたので安心した。

「それに、ここの領地は広いから、やりがいがありますよ」
「嬉しいことを言ってくれるわ。今度、あなたのお弟子さんやご家族を集めて、お食事会をしましょう」

 エーグル辺境伯領への移住祝いだ。

「領地の美味しいものを用意するわ」
「ありがたいことです。ちなみに、皆酒が大好きです」

 いたずらっ子のように言うプロメスに、私も笑う。

「美味しいものを、たくさん用意しておくわ」
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