転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第33話 デリーの死

「デリーが倒れた」

 その一報がお爺さまから届いた瞬間、私は走竜に飛び乗っていた。
 ウェスタ兄さまも共に走竜を操る。
 私たちは通常よりも倍の速さで、王都を目指した。

 それは、夕飯を食べ終え、家族でのんびりとお茶をしているとき。
 知らせ鳥の中でも一番早いと言われている種類の鳥を抱えて、執事のゼノアが部屋に駆け込んできた。

「デリー様が、王城でお倒れに!」

 その手紙をひったくり、中を確認すると私はすぐに走竜を呼ぶ。
 ピュウイと指笛を鳴らすと、私に馴染んだ子がすぐに空から降りてきた。

 走竜は、人を乗せるときは地を走るが、常は空を飛んでいる。
 本当は空を飛んで行きたいくらいの気持ちだが、人を乗せて空を飛ぶ訓練はしていないので、それはできない。

「どうして、デリー」

 頭の中には、いろいろな状況が浮かんでは消えていく。
 手紙の中に書かれていたのは、食後テラスに出て少ししたら、倒れ込んだということだけ。

 食事は全て改められたが、毒は出なかった。
 もちろん、毒に反応する食器を使っているから、そうそう混ぜ込むこともできないだろう。

「食事に毒を盛られたのではないのなら、何があったの。テラスで倒れたということなら、そこで何者かに襲撃された?」
「だが、さすがにそれなら、痕跡があるだろう」

 連絡を寄越してきたのは、デリー付きの侍女だ。

『倒れたまま、意識が戻らない。死をも覚悟の上』
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