転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 手紙にはそうも書かれてあった。
 その侍女とは何度か面識もあり、何かあれば連絡するように告げてあった。
 
 彼女は、もともと我がエーグル辺境伯領の出身でもある。
 嘘を書くようなこともない。

「今の状況がわからないと、どうにも。あぁ、早く着きたいのに!」

 私の言葉を聞いたからか、走竜のスピードがさらに上がる。
 走竜は利口なのだ。

 本来一晩かけて到着する王城に、半分以上短い時間で到着した。
 さすがに体は疲弊しきっているけれど、そんなことを言ってる場合ではない。

 走竜を乗りこなしている時点で、エーグル辺境伯領の者だとはわかる。
 さらに家門のついたタグをウェスタ兄さまが見せれば、第一王子の婚約者である家門ということで、すぐに中に入ることができた。

「イリス」

 側妃であるレテシア殿下が、私の手を取る。
 そのまますぐに部屋に案内された。

「デリーはこの通り、昏睡状態で……」

 ベッドに横たわるデリーは、けれどけして顔色も悪くない。
 穏やかな息をして、ただただ眠っているだけのようだった。

 ……ん?

 眠って?

 自分で思ったその言葉に、違和感を感じる。
 そうして、すぐにデリーの手のひらを確認した。

「これだ……」
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