転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
地の底から這い出したような私の声に、ダフニス・ヘラインはこくこくと頷く。
つまり、処方されていた目薬のせいで視界が悪くなっていたデリーは、眠り虫に気付かずに触れてしまった。
眠り虫とは、その名の通り刺した相手を眠らせる毒を持っている虫だ。
その毒は、解毒しない限り体を、そして体の機能を眠らせ、やがて揺るやかに死に至らせる。
この国にはいない筈の虫で、その生息地は──言うまでもなくセルート大公国。
「ここのハーブ園には確か、ヨシュニュア草とロテルの花があったわね。それと水を含んだツクヨムの実を持ってきて。あとすり鉢も」
届けられたそれらを全て擦り、口に含んだ。
そして、そのままデリーの唇に、私のそれを重ねる。
ファーストキスが、婚約者の命を救うためだなんて、なかなかあることじゃない。
そんなことを思いながら、飲み込んで、と必死で口移しをする。
僅かに喉が動いたと思ったそのとき。
「……んんっ?」
デリーの舌が私の口に入ってきた。
慌てて唇を離し、顔を見れば、彼の瞳がゆっくりと開く。
「イリス……? あれ、今の、夢じゃなく……?」
そんなことを言われたら、恥ずかしくなって、思わず自分の唇を手の甲で隠してしまった。
「デリーっ!」
つまり、処方されていた目薬のせいで視界が悪くなっていたデリーは、眠り虫に気付かずに触れてしまった。
眠り虫とは、その名の通り刺した相手を眠らせる毒を持っている虫だ。
その毒は、解毒しない限り体を、そして体の機能を眠らせ、やがて揺るやかに死に至らせる。
この国にはいない筈の虫で、その生息地は──言うまでもなくセルート大公国。
「ここのハーブ園には確か、ヨシュニュア草とロテルの花があったわね。それと水を含んだツクヨムの実を持ってきて。あとすり鉢も」
届けられたそれらを全て擦り、口に含んだ。
そして、そのままデリーの唇に、私のそれを重ねる。
ファーストキスが、婚約者の命を救うためだなんて、なかなかあることじゃない。
そんなことを思いながら、飲み込んで、と必死で口移しをする。
僅かに喉が動いたと思ったそのとき。
「……んんっ?」
デリーの舌が私の口に入ってきた。
慌てて唇を離し、顔を見れば、彼の瞳がゆっくりと開く。
「イリス……? あれ、今の、夢じゃなく……?」
そんなことを言われたら、恥ずかしくなって、思わず自分の唇を手の甲で隠してしまった。
「デリーっ!」