転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第34話 消えた王国

 エーグル辺境伯家から、王家、それと共に各貴族家へと出した通達は、瞬く間に事態を変えていった。
 
「側妃、及び第一王子の命を狙う正妃とそれを制御できない国王、我が儘なだけの第二王子に対し、エーグル辺境伯家はハッグス王国を離脱する」

「側妃であるレテシア・ホムルグ・ハッグスはその名を捨て、レテシア・ホムルグと戻り、王家の傲慢に対し離脱の意を表し、エーグル辺境伯家と合流する」

「第一王子であるデルピニオ・ハッグスはその名を捨て、ただのデルピニオとなり、エーグル辺境伯家令嬢イリス・エーグル嬢の婿養子となることを宣言する」

 この通達に、第二王子の婚約者であったクレオメガの家門、ワストル公爵家が立ち上がった。
 立ち上がったと言っても、けして王家を守るためではない。
 王家を乗っ取るには、今が好機と捉えたのだろう。

「レテシア殿下のご実家も皆さんこちらに与してくださって」
「あらやぁね。イリスったら、お義母さまと呼んで頂戴。そう呼ぶって言ってくれたでしょう?」

 ころころと笑いながら、エーグル辺境伯家のバラの庭で、レテシア殿下──お義母さまはゆったりとお茶を飲んでいる。

「でも、まさかあんなに早く、王家が消えてしまうとは思いませんでした」
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