転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 この世界が乙女ゲームを元にした世界だからなのか、やっぱり花嫁のドレスは白らしい。
 仕方がないので、お披露目のドレスには黒を入れて貰えるようにお願いすることにする。
 ジョニュア女史も、私の申し出に生暖かい視線で微笑んでくれた。

    ***

 やっとイリスと結婚することができる。
 子どもの頃のあの熱で、前世の記憶を思い出して以来、ずっと彼女を守らないといけないと思っていた。

 前世の記憶だけで好きになったわけじゃない。
 最初は彼女を悪役令嬢にしないために、と早い段階でエーグル辺境伯家に来たけれど、一緒にいるうちに、そのままの彼女がとても大切になったんだ。

 僕がなにかする必要もなく、イリスはイリスらしく生き、そして悪役令嬢になんてならなかった。
 乙女ゲームは弟の第二王子側で動いてくれたのも、イリスの知啓によるものだ。
 まさか僕がこの領地への亡命直前で狙われてしまうとは、痛恨の極みだった。
 だけど、なんだかんだでうまくいってよかった。

 それもこれも、全てイリス・エーグル。君が君らしくあってくれたからだ。
 僕の前世の記憶や知識なんて、何の役にも立たなかったね。

 愛してるよ、イリス。
 第一王子から、ただのデルピニオになった僕だけど、ずっとずっと。
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