転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「デリー」

 彼に手を伸ばす。デリーは私を抱き寄せ、私の手は彼の背中に回る。

「僕の奇跡。愛してるよ、イリス」

 柔らかな声が耳に響く。
 デリー越しに見えるバラの花達が、まるで笑っているかのように風に揺れる。
 
「私も、愛しているわ、デリー」

 ゆっくりと、デリーの唇が重なる。

「私のこれはセカンドキスよ」
「えっ! イ、イリス! 誰と……っ」

 デリーが焦って私の腕を掴む。
 だから笑って告げるのだ。

「あの日、あなたを助けるためにした口づけが、私のファーストキス」
「あぁ……。イリス」

 彼が私の髪を一束手に取り、口づけした。

 月の光。
 バラの花。

 小さく咲き誇る春の花々。
 夕闇に強く香る木立の白い花。

 その全てが、私たちを祝福していた。

 end
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