転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 どこで乙女ゲームの強制力みたいなものが、働くかもわからない。
 もしかしたら、婚約者が第一王子じゃなくなっても、悪役令嬢の仕事をさせられるかもしれないもんね。
 そうなったときは、すぐにウェスタ兄さまを始め、家族に相談しよう。うん! 報連相。それが大事!

「デリーとは、王城のパーティの前にでも、会いましょうね。あぁ、ドレスを作ったりしないと。忙しくなるわよ、イリス」
「え……、あの……。ハイ……。お母さま、領地もまわりたく……」
「そうねぇ。支度の間なら構わないわ。アレウス達に聞いたけど、随分と難しい本まで読んでるみたいじゃない」

 あ、兄さま達ったら、しっかりお母さま達にも伝えたのね。

「お家に籠もっている間に、領地の役に立つことを学びたくて」

 万一断罪されたときのためにも、領地の役に立っておきたいしね。

「本当に、イリスは良い子だなぁ。よそに嫁にやりたくなくなる」
「父上、それですよ。婿をとって領内に住んで貰えば」
「テミーったら、なんて良いアイデアを……。まあ無理でしょうけどねぇ」

 お父さま、テミー兄さま、お母さまの会話を、皆が──部屋にいる侍女やメイド達までもが頷きながら聞いている。
 いやほんと、イリス・エーグルってば愛されすぎなのでは……。
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