転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 まずは領地の収入に直結する実がなる作物。それをいろいろな種類育てつつ、土壌改良やこの世界にあった農薬を探していきたい。
 なんといっても、前世の知識とこの世界の農業知識を持っているのだ。
 もしもこの世界にノーベル賞があったら、受賞してしまうんじゃないかしら。

 ……。ちょっと調子に乗りすぎたわね。

 まずは畝を作る場所の土を、よく耕す。
 私のサイズにあわせた鍬の準備までしてくれてるなんて、ホロ爺ってば仕事ができるっ!
 とはいえ、領内を駆け回っているとはいえ、十歳の少女の力と体力なんてたかがしれている。

「……ほとんどホロ爺にやってもらっちゃったわ」
「あっはっは。いいんですよ。嬢ちゃまは、儂らみたいのを使う側だ。どんなことをするのかさえ知っていれば、農業の現場での指示を出す方にいればいい」

 でも、私もやりたいんだよね。
 そんな私の不満そうな顔に気付いたのか、ホロ爺がしゃがんで私の目を見る。

「なぁに。これからやることは山ほどある。植え付けや手入れは、嬢ちゃまの体力でもできることはたくさんあります」
「そう……。そうね! そうだわ! それに、私は研究もしないといけないものね」

 ホロ爺の励ましで、一気にやる気が出た。

「ありがとね、ホロ爺」
「うぐっ! うちの嬢ちゃまがかわいすぎる……!」

 立ち上がったホロ爺を見上げてお礼を言えば、彼は空を見ながらそんなことを言い出した。
 我が家、隠密やってる庭師まで私に甘いのね。
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