転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 この畝は二週間ほど時間をおいて植え付けをする。
 それとは別に、もともと植え付けが可能になっている場所に、ホロ爺が用意してくれた苗を植えた。
 小さな鉢植えには種を植えて温室に。
 これで今日の作業は終わりだ。

 いろいろな条件で植え付けることで、この世界の植物の状況を確認する。
 それが我が家の庭でガーデニングをする理由。

「なーんて」

 植え付けたトマトみたいな植物、トマティッレの葉をつんつんとしながら、笑う。
 乙女ゲームの世界だからか、良く知っている植物がたくさんあった。
 いろいろ言い訳をしたところで、実際のところ、私の本音は一つなのだ。

 前世同様、ガーデニングを楽しみたいっ!

「大きくなってね」

 つんつんと葉っぱに触れながら、ふと思う。
 これがゲームの世界なら、これがフラグになって、トマティッレがすごい勢いで育ったりしちゃったりして。
 そして私は聖女と呼ばれ──だめだ。面倒だな。
 まぁ、実際はそんなこと起きるわけはないんだけどね。
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