転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

    ***

 午後はお母さまが呼び出した、仕立屋さんとの打ち合わせ。
 採寸から始まって、どんなドレスにするかを決める。

「先にデザインを決めるのかと思ってたわ」
「体型によって、お似合いになるドレスというものがございます。見た目だけでは判断できないので、先に採寸を」

 デザインを決めた後、他に必要な箇所があれば追加で採寸するらしい。
 なるほど。確かに理にかなっている。

「今回はエーグル辺境伯家が主役といっても過言ではないパーティでございますので、イリス様も、豪華なドレスを」
「あ……いやあの、できれば動きやすいものに」
「動きやすさよりも、美しさでございましょう?」

 デザイナーのジョニュア女史が、ギャグみたいな尖ったメガネをかけて迫ってくる。
 いやそうじゃない。
 美しさよりも動きやすさ、と言いたいところだけど、さすがに王城のパーティだもんね。
 それならば、せめて動きやすく美しいドレスの提案をしないと。
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