転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
「あっ!」

 思わず立ち上がる。

「イリス? どうしたのかしら」
「お母さま、タッケィです」

 タッケィとは竹のこと。
 我が領には、タッケィ林──つまりは竹林が多い。辺境伯領は隣国との戦いがいつ起きてもおかしくない立地のため、小さい頃から武器を持って訓練をする。

 それは平民も同じで、小さい頃は比較的軽い竹光などを使って訓練をするため、竹を植えているのだ。
 竹は薄く削げば、弾力性のある良い素材になる。
 そう、つまりは──

「フェデル、薄く削いだタッケィを用意して、とホロ爺に伝えて」
「かしこまりました」

 ほんの少しの時間を待つだけで、すぐにそれは届けられた。
 前世で小学生の頃に工作で使ったことがあるような、竹ひごだ。

「ジョニュア女史、これをこう、円になるようにですね」

 私はそれを使いながら、クリノリンの形を作り上げる方法を説明する。
 布の使い手としてはプロフェッショナルなのは、彼女の方だ。
 すぐに、どんな素材の布を使ってクリノリンを作れば良いかまで考えついたらしい。

「これがあれば、下に何枚ものペチコートをはかなくて良いから、動きやすいし、こうして」
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