転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第9話 第一王子を知る

 ガーデニングを始めてから二週間。
 畝に苗を植えたり、温室の種の様子を調査したりと、それなりに忙しくしていた。
 それと同時に、許可がでた領地まわりをフェデルとウェスタ兄さまと三人でしている。

「タッケィについては、新しい使い道が増えたから、あっちの閑地にも植えても良いかもしれないわね」
「お嬢さまのアイデアの、新しい下着にもタケッティを使っておりますからね。あの下着は大変素晴らしゅうございます」
「……あのさ、できればその話は僕がいないところで頼むね」

 移動は馬。私が乗るのは小さめの馬だけれど、それでも足が速い子だから二人に後れを取ることはない。
 あれからクリノリンの他に、コルセットの骨や、前世でつかっていたようなワイヤーブラジャー、それにスポーツブラジャーのようなものも提案した。

 そして、大変に……お祭り騒ぎになるほど、褒めそやされた。
 悪い気分じゃないから、困っちゃうのよね。

 領内を馬で駆けながら、畑の様子をチェックし、困っていることはどんなことかを聞いてまわる。
 まるで御用聞きみたいだけど、これって結構大事なのよねぇ。

「あそこの木の下で休憩にしよう」

 二時間くらい走り回ったあと、ウェスタ兄さまが小山の上にある一本の糸杉を示した。
 あそこは、領地の東側を一望できる場所なのだ。
 そこへ向かう途中。

「ひゃあぁっ?!」
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