転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない
 そう問えば、ウェスタ兄さまは驚いた顔をしている。
 ま、この話の流れで突然第一王子のことを聞きだしたら、そうなるよね。

 でももしかしたら私の婚約者になっていたかもしれない相手だし。
 今後何かの強制力で断罪とかされても困るし、情報は集めておきたいのよねぇ。

「そうだな……。そもそもどうして我が国には正妃と側妃がいるかは、知ってるか?」
「正妃陛下に、お子がなかなかできなかったから?」

 側妃の子が第一王子であるということは、そういうことなんだろう。
 と、思ったら、どうやら違うらしい。ウェスタ兄さまは苦笑いを浮かべながら、ゆるりと首を横に振った。

「正妃との婚約中に、側妃になる前の、伯爵令嬢が妊娠したんだよ」
「……は?」

 正妃は他国の姫君だ。つまり、国と国との政略結婚。
 それをなんと心得ているのか。
 あー、なんだ。

 そうか。そういうわけか。
 だから乙女ゲームでも、第一王子は婚約者の私がいても浮気するわけか。

 親がそんなだから、倫理観がぶっ壊れてるってわけね。
 ──もちろん、親を反面教師にしてまっとうに育つ場合もあるだろうけどさ。

「それでよく、正妃陛下は嫁いで来てくれたわね」
「正妃は正妃で、母国で何かやらかしてきたらしいよ」

 ワーオ。
 割れ鍋に綴じ蓋ってやつかぁ。

「ねぇ、王家って、アレな集まりなの?」

 ウェスタ兄さまはため息を一つ吐いて、私の髪を撫でた。

「まぁ、それでも第一王子はマシだと思うよ」
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