転生したガーデナーは、悪役令嬢の夢を見ない

第10話 黒幕ってそんなにすぐにわかるものなの?

 第一王子はマシ、と言う言葉の真意を聞こうとしたところで、迎えの馬車が到着した。
 ウェスタ兄さまは馬を連れて帰らないといけないので、迎えに来てくれたフェデルと二人で馬車に乗る。
 私が乗っていた馬は、馬丁が来てくれたので連れ帰って貰う。怖い目にあったから、ケアをしてあげないといけないしね。

 そうして、馬車の横にウェスタ兄さまが護衛に付くという厳重体制で屋敷に戻ると、お母さまが抱きしめてくれた。
 抱きしめられたまま、ずるずると引きずられ、応接室に行くと、家族全員揃っている。
 当たり前ではあるけれど、皆顔が──怖い。

「フェデルが刺客を追い詰めたときには、死んでいたという」

 お父さまの言葉に、私の後ろにいたフェデルが「はい」と答えた。

「奥歯に毒を仕込んでいたようです。死体はホロ爺に預けてあります」

 部屋の中に緊張が走る。捕らえられて拷問に負けるよりも、自死を選ばされている刺客ということだ。
 応接室のほの暗く灯っているランプが、震えたように見えた。
 
「ホロ爺からは、刺客の右足の付け根に、テグネ族の成人の儀で行う傷があったという」
「テグネ族?」

 テミー兄さまが、お父さまの言葉を拾う。

「テグネ族ってのは、ワトスル公爵領に住む一族だよ。少数部族で狩りをする」
「メル兄、ワトスル公爵って、第二王子の婚約者の」
< 42 / 168 >

この作品をシェア

pagetop